CoreDAOの謎に迫る(2):匿名の開発主体とその背後にある可能性
CoreDAOは、Bitcoinの永続性を志向する革新的なレイヤー1ブロックチェーンプロジェクトとして、その技術的な野心と、3年にもわたる活動にもかかわらず開発主体が匿名であるという謎めいた側面で注目を集めています。
Satoshi Appでの130BTCという巨額なエアドロップや、Brendon Sedo、richrinesといったコントリビューターがメインネットローンチ後に前面に出てきたにもかかわらず、その核心であるCoreDAOがどのような集団で、どこに所在しているのかは依然として不明です。この問いに対し、様々な角度から仮説を立て、その可能性を深掘りしてきました。 >>【CoreDAOの謎に迫る(1):SatoshiAPPを使った初期戦略分析】
CoreDAOの匿名性とその背景
なぜCoreDAOは匿名性を保ち続けるのでしょうか?いくつかの理由が考えられます。
- DAOの性質: 分散型自律組織(DAO)の理念は、特定の個人や組織に依存しない非中央集権的な運営を目指します。
- 規制と法的側面: 暗号通貨の規制が不確実な中、将来的な法的リスクを回避するための戦略である可能性があります。
- プロジェクトの初期段階: Web3プロジェクトでは、初期段階で匿名性を保ち、開発が進むにつれて透明性を高めるケースが見られます。
CoreDAOの背後にある有力な存在の仮説
CoreDAOがこれだけの規模と期間で活動できる背景には、何らかの強大な存在がいるはずです。私は以下の6つの仮説を立て、それぞれを検証しました。
仮説1:Binanceの関与
根拠 | 考察 |
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技術的類似性: GethコードベースとBSC(Binance Smart Chain)チームの改良を基にしたフォークである点。 | Binanceの技術的専門知識やリソースが投入されている可能性が高い。 |
資金力とインフラ: 130BTCのエアドロップや長期運営を支える莫大な資金。 | 世界最大の暗号通貨取引所であるBinanceの資金力とインフラは十分。 |
戦略的提携: 「Bitcoin-powered, Bitcoin-aligned, EVM-compatible」という CoreDAOのコンセプト。 | Bitcoinエコシステムとの連携を模索するBinanceの戦略と合致する可能性。 |
評価: 技術的側面と資金力から見て、最も有力な仮説の一つです。Binanceは株式を公開していない私企業なので仮説2のCoinbaseよりもAnonymousなプロジェクトへの参加が容易だと考えます。水面下での協力関係も十分に考えられます。
仮説2:Coinbaseの関与
根拠 | 考察 |
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Bitcoinエコシステムへの長年の関与: マウントゴックス破綻後も、米国の主要なビットコイン取引所として重要な役割。 | ビットコインの普及と発展に貢献し、その技術的・資金的なリソースは十分。 |
規制への順応性: 上場企業であり厳格な規制順守を重視。匿名性戦略の理解。 | 将来的な規制を見据えた匿名性戦略をとっている可能性も。 |
評価: 可能性はゼロではないものの、上場企業であるCoinbaseが完全な匿名プロジェクトに深く関与する動機としてはやや弱いかもしれません。
仮説3:BTCマイナーの大手、もしくは連合体
根拠 | 考察 |
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SatoshiPlusコンセンサス: BitcoinのPoWを利用し、COREトークンでマイナーにインセンティブを提供。 | Bitcoinマイナーの収益安定化や新たな収益源確保に直結するため、推進者となる動機が非常に強い。 |
マイニング業界の課題解決: 半減期による報酬減少や電力コスト高騰への対策。 | マイナーが投資を最大限活用し、将来にわたって収益を維持するための解決策となり得る。 |
評価: CoreDAOの技術的特徴とマイニング業界の状況を考慮すると、非常に説得力のある仮説です。
仮説4:DCG(デジタルカレンシーグループ)
根拠 | 考察 |
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タイムラインと戦略: DCGがBTCマイニングの覇権を画策していた時期とCoreDAOの活動期間が重なる。 | 暗号通貨業界全体に大きな影響力を持つDCGが、インフラレベルのプロジェクトに投資する可能性は十分。 |
幅広い投資と影響力: GrayscaleやGenesisなどを傘下に持ち、ビットコイン機関投資家への普及にも関与。 | DCGの資金力と投資戦略に合致する。 |
評価: 傘下企業Genesis破産の影響や透明性の問題は残るものの、暗号通貨業界におけるDCGの広範な影響力を考慮すれば、可能性はあります。
仮説5:中国政府
根拠 | 考察 |
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Confluxとの類似性: 中国政府の支援を受けるとされるConfluxと、技術的類似性。 | ブロックチェーン技術の主導権を握るために、複数の類似プロジェクトを推進している可能性。 |
デジタル人民元(CBDC)推進: CBDC開発基盤としてL1ブロックチェーンに投資。 | 戦略的にL1ブロックチェーンに投資する動機がある。 |
匿名性の確保: 国際的な政治的配慮から匿名性を保つのは理にかなっている。 | 国家レベルの関与を隠蔽する目的。 |
評価: Bitcoinへの厳しい姿勢との矛盾は残りますが、地政学的な視点からは排除できない仮説です。
最終仮説:サトシ・ナカモトの壮大な計画
そして、最もロマンチックで、同時にBitcoinの根源的な問いに触れる「最終仮説」です。理想論的な夢想ではありますが、AnonymousなままのCoreDAOでいる限り、こういった仮想通貨ファンの夢は維持されています。
仮説6:CoreDAOはサトシ・ナカモトがBitcoinの永続性を担保するために事前に計画していたプロジェクトである。
この仮説は、サトシ・ナカモトがBitcoinの創始者として、その設計思想だけでなく、将来的な限界(マイナー報酬の減少、スケーラビリティなど)も深く理解していたという前提に基づきます。
根拠 | 考察 |
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Bitcoinの設計思想と限界の認識: 半減期による報酬減少やスケーラビリティの課題を予見。 | L1の限界を補完する「サイドチェーン」としてのCoreDAOの必要性を認識していた。 |
「補完的プロジェクト」としてのCoreDAO: 「Bitcoin-powered, Bitcoin-aligned, EVM-compatible」というコンセプト。 | BitcoinのL1を変更せず、機能性やスケーラビリティ、マイナーインセンティブを強化する役割。SatoshiPlusコンセンサスがBitcoinマイナーを積極的に巻き込む点は特に重要。 |
資金面:サトシ・ナカモトの膨大なウォレット: 未だ動かない推定100万BTC。 | 長期的な計画を示唆し、CoreDAO運営やエアドロップのための資金源として事前に用意されていた可能性。 |
「時限的」なプロジェクトの準備: 彼がBitcoinコミュニティから姿を消した時期。 | 撤退が、Bitcoinの将来のための「仕込み」を終えたタイミングであった可能性。信頼できるチームにプロジェクトを託していたと解釈できる。 |
「Satoshi Plus」の名称とBitcoinとの密接なアラインメント: アルゴリズム名やプロジェクトの強調点。 | 単なるマーケティングではなく、サトシ自身への敬意、あるいは彼との直接的な関連性を示唆。 |
評価: この仮説は、CoreDAOの匿名性、大規模な活動、Bitcoinエコシステムへの深いアラインメント、そして特にSatoshiPlusコンセンサスという特徴を、非常に一貫性のある形で説明し得ます。ただし、サトシ・ナカモトが誰であるか、彼のウォレットがいつ動くのかといった根本的な情報がない限り、検証不可能な「理想論」であることも事実です。しかし、この壮大な物語は、CoreDAOを単なる技術プロジェクトではなく、Bitcoinの永続性というより大きなビジョンの一部として捉えることを可能にします。
CoreDAOの最初期のarticle、“Core Blockchain Origin”の序文を読めば、CoreDAOが持つSatoshiへの敬意の深さを感得できるほど、このプロジェクトはSatoshi Nakamotoに傾倒しています。
まとめと今後の展望
CoreDAOの真の開発主体は、依然として謎に包まれています。しかし、今回の考察を通じて、BinanceやBTCマイナー連合といった現実的な有力候補から、サトシ・ナカモトの壮大な計画というロマンあふれる最終仮説まで、様々な可能性を深く掘り下げることができました。
CoreDAOが今後、どのような形で情報開示を行うのか、あるいはその匿名性を貫き通すのかは不明ですが、その動向はBitcoinエコシステムの未来を占う上で非常に重要な意味を持つでしょう。CoreDAOが本当にBitcoinの永続性を担保する役割を果たすのか、引き続き注目していく必要があります。
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