CoreDAOの謎に迫る(1):SatoshiAPPを使った初期戦略分析
時期 | 出来事 | 詳細・意味合い |
---|---|---|
2021年12月10日頃 | CoreDAO Testnet Block 0 生成 | ブロックチェーンの技術的な誕生。参照サイトの情報から、日付をより具体的に推定。 |
2021年12月下旬 | 中国国内版 Satoshi APP (BTCs.love) ローンチ(今回の調査の核心) | 最初のユーザー獲得フェーズ開始。ドメインbtcs.loveを使用し、中国国内に限定して先行リリース。 |
2022年4月9日 | グローバル版 Satoshi APP (btcs.global) ローンチ | ドメインbtcs.globalを使用し、全世界へ展開開始。参照サイトの情報により、従来の「3月」という情報から、より正確な「4月9日」という日付が判明。 |
2022年6月乃至7月 | BTCsからCoreへのリブランディング | プロジェクトのビジョン拡大に伴い、名称とロゴを変更。 |
2023年1月14日 | CoreDAO Mainnet ローンチ | テストネットから本番環境へ移行。COREトークンが取引可能になり、エコシステムが本格始動。 |
2種類のリファラルリンクとSNSの壁
Satoshi APPの先行リリースBTCS.loveには中国版がまずリリースされ、その後グローバル版がリリースされた経緯があります。中国版のユーザーはそれ専用のリファラルリンクとグローバル版のリファラルリンク、つまり2つのリファラルリンクを持っています。「2つのリファラルリンク」の存在は、中国国内版とグローバル版でユーザーデータベースやサーバーが物理的に(あるいは論理的に)分離されていたことを強く示唆します。これは、単にアプリの言語を変えただけのものではない、意図的な二段階ローンチ戦略の動かぬ証拠と言えます。
そして、この戦略を支えたのが、各地域で主に使用されるSNSの「壁」でした。>>【参考資料: BTCs=CORE / Bitcoin3.0 >>From the Chinese documents】
1. 中国国内での拡散(2021年12月〜):微博 (Weibo) と WeChat
私たち中国以外のユーザーにとって確認が難しい部分を重点的に調査しました。
調査手法: 中国語のキーワード「比特币satoshi」「BTCs.love 邀请码 (招待コード)」「中本聪satoshi app」などを使い、特定時期のWeiboの投稿を検索。WeChatは閉鎖的なため外部検索は困難ですが、その拡散パターンを分析。
判明した事実:
- Weiboでの初期の投稿: 2021年12月下旬から2022年初頭にかけて、Weibo上で「これは第2のビットコインだ」「無料でマイニングできる」といった触れ込みと共に、btcs.loveドメインへのリファラルリンクや自身の招待QRコードを共有する個人ユーザーの投稿が多数確認できます。これらは組織的な広告ではなく、完全に草の根の口コミ(バイラルマーケティング)でした。
- WeChatでの拡散: WeChatでは、その性質上、友人・知人同士のプライベートチャットや、LINEのタイムラインに相当する「朋友圈 (モーメンツ)」を通じて、招待リンクが爆発的に拡散したと考えられます。WeChat Payが普及している中国では、金銭的なインセンティブを伴う情報がWeChat内で急速に広まる土壌があり、Satoshi APPのエアドロップはまさにその典型例でした。
結論: 中国国内版は、外部の目に触れにくいWeiboやWeChatといった「壁の内側」のSNSを巧みに利用し、グローバル展開に先駆けて巨大な初期ユーザー基盤を静かに、しかし確実に形成していたのです。

2. グローバルでの拡散(2022年4月〜):X (旧Twitter)
調査手法: キーワード「Satoshi APP」「BTCs」「CoreDAO」などでX(旧Twitter)の投稿を時系列で分析。
判明した事実:
- btcs.globalがローンチされた2022年4月以降、それまで散発的だった英語、日本語、スペイン語、ヒンディー語など、多言語での言及が急増します。
- 拡散の主な担い手は、暗号資産系のインフルエンサーや、新しいプロジェクトに敏感なアーリーアダプターたちでした。彼らがYouTubeやTwitterで紹介動画や解説記事を投稿し、そこから世界中に広がっていきました。
- 中国国内版とは異なり、オープンなプラットフォームであるTwitter上で情報が拡散されたため、プロジェクトの認知度が世界レベルで一気に高まりました。
ここまでのまとめ
今回の詳細な調査により、CoreDAOの初期戦略の全体像が完全に明らかになりました。
それは、「SNSの壁を利用した、意図的かつ段階的なグローバル展開戦略」です。
- 先行ローンチ(中国): 閉鎖的なSNS(Weibo, WeChat)を利用して「壁の内側」で先行ローンチ。プロジェクトを極秘裏にテストし、数百万規模の強力な初期ユーザー基盤を構築。
- 本格ローンチ(世界): オープンなSNS(Twitter)を利用して「壁の外側」へ展開。中国での先行ローンチで得た実績と熱量を武器に、一気にグローバルな注目を集める。
CoreDAOの軌跡:ジェネシスブロックから数千万ユーザー獲得までの歩み
CoreDAOは、その誕生から現在に至るまで、戦略的なロードマップに基づいて成長を遂げてきました。このセクションでは、CoreDAOがどのようにして技術基盤を構築し、広範なユーザーベースを獲得していったのかを、ここでもう一度時系列に沿って解説します。 >>【参考:BTCs=CORE / Bitcoin3.0 Core Public Chain】
フェーズ1:技術基盤の確立と最初のブロックの生成 (2021年12月)
CoreDAOプロジェクトの最初の節目は、2021年12月にCoreDAOチェーン(当時の名称はBTCsチェーン)でBlock 0、すなわちジェネシスブロックが生成されたことです。これはCoreDAOブロックチェーンの技術的な起源を示し、後のメインネット稼働に向けた基盤の確立を意味します。この時点ではまだ一般ユーザーが利用できる状態ではなく、テストネットとしての機能が中心でしたが、ブロックチェーンそのものが稼働を開始した重要な瞬間でした。
---フェーズ2:特定市場での先行展開とユーザー獲得 (2021年12月~)
ジェネシスブロックの生成とほぼ同時期に、中国国内版Satoshi APP(旧BTCs.love)がローンチされました。この先行ローンチは、中国市場を最初のターゲットとすることで、プロジェクトの初期段階におけるリスクを管理し、実際の運用環境でのテストを行うことを目的としていました。
このアプリの普及は、公式発表よりも口コミや個人の招待(リファラル)を通じて静かに、しかし急速に進展しました。この段階的なアプローチにより、開発チームはアプリの機能性、エアドロップの仕組み、およびユーザーの行動を詳細に分析し、改善を重ねる機会を得ました。これは、後の大規模なグローバル展開に向けた重要な準備期間となりました。
---フェーズ3:グローバル市場への展開とユーザーベースの拡大 (2022年3月)
中国国内での初期展開が成功裏に完了した後、CoreDAOは2022年3月に全世界版Satoshi APPをローンチしました。これにより、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ大陸など、世界中のユーザーがSatoshi APPを通じて無料のエアドロップに参加できる環境が整いました。
このグローバルローンチは、CoreDAOコミュニティの規模を一気に国際的なレベルへと拡大させる主要な要因となりました。結果として、2022年中には数千万人のユーザーベースを構築することに成功し、CoreDAOは世界有数の大規模コミュニティを持つブロックチェーンプロジェクトの一つとしての地位を確立しました。
---戦略的な意義:段階的アプローチの利点
CoreDAOが採用した「①技術基盤の誕生 → ②特定地域での先行展開 → ③全世界への展開」という段階的なプロセスは、プロジェクトの成功において極めて戦略的な意味を持っていました。
- リスク分散: 全世界での同時ローンチによる潜在的な技術的・運用上のリスクを回避し、限定された市場で十分にテストと改善を行うことが可能になりました。
- コミュニティの先行構築: メインネットローンチ(トークンが実質的な価値を持つ時点)の1年以上前からユーザーを獲得し始めることで、CoreDAOはプロジェクトの本格稼働時にはすでに強固で大規模なコミュニティを形成していました。これは、他の多くの新規プロジェクトには見られない、CoreDAOの圧倒的な競争優位性となりました。
CoreDAOのこの戦略的なロードマップは、ブロックチェーンプロジェクトが持続可能な成長と広範なユーザー獲得を達成するための有効なモデルを示しています。
>>【CoreDAOの謎に迫る(2):匿名の開発主体とその背後にある可能性】
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