CoreのMainnet後に起きた謎:OpenEXとミームコイン、そしてBoatチェーンの残影
~幻影の提携とSolanaへの回帰~
Web3の世界は常に動きが激しく、新しい潮流が次々と押し寄せます。「WAGMI(We're all gonna make it)」という共通認識の裏で、「NGMI(Not gonna make it)」の現実が横たわることも少なくありません。特にミームコインの台頭は、その熱狂的なコミュニティ形成能力と、DeFiプロジェクトとの複雑な絡み合いによって、時に希望を、時に混乱をもたらしてきました。今回は、CoreDAOのエコシステムで期待され、そのサイドチェーンとして開発が進められてきたOpenEXを取り巻く、一連のミームコインプロジェクト(PumpkinCat、COME、Wen)と、幻の存在となりつつあるBoatチェーンの複雑な関係性を、時系列で紐解き、その背後にある真実を冷静に探ります。 >>OpenEX関連最新記事【「OpenEX Network」の現状把握】
黎明期の胎動:CoreDAOエコシステムに芽吹いた期待とミームコインの誘惑
2023年2q以降、CoreDAOはLayer1ブロックチェーンとしてその存在感を高め、多くのプロジェクトがそのエコシステムに集積し始めました。その中でも、特に注目を集めたのが、CoreDAOのサイドチェーンとしてトランザクションのスケーラビリティ向上を目指したOpenEXです。AGI: Artificial General Intelligence(汎用人工知能)支援の分散型取引所としての機能に加え、将来的には多様なDeFiサービスを統合するハブとなることが期待され、その動向は多くのCoreユーザーの関心事でした。
しかし、この時期は同時に、ミームコインの熱狂が世界中を席巻していた時代でもあります。「Wen(いつ?)」という言葉が飛び交い、未だ見ぬプロジェクトへの期待感と投機熱が渦巻く中、CoreDAOエコシステム周辺にも、その波は押し寄せます。Coreチェーン上に構築されるOpenEXという「未来」への期待感と、瞬く間の成功を夢見るミームコインの「今」が、奇妙な共存関係を築き始めたのです。
錯綜するタイムライン:幻影の提携とプロジェクトの残影
CoreDAOエコシステム周辺で語られた「提携」や「連携」の噂は、常に明確な公式発表よりもコミュニティ内の情報拡散が先行していました。ここでは、主要な出来事を時系列で整理し、それぞれのプロジェクトがどのように語られてきたのかを俯瞰します。
【主要プロジェクトとトークン】
- OpenEX (OEX): CoreDAOのサイドチェーン(トランザクション特化)として開発されるDEX。
- Boatチェーン (BOAT): OpenEXとの提携が噂された独自のブロックチェーン。
- COME ($COME, $BOAT, $YACHT): Boatチェーンと関連付けられたミームコインプロジェクト。
- PumpkinCat ($PUMP): COMEと関連が示唆されたミームコインプロジェクト。
- Wen ($WEN): 当時のSolanaミームコインブームの代表格の一つ。
【タイムライン:幻影の提携と動きの鈍化】
三つ巴の複雑な関係性:なぜ彼らは結びついたのか?
当時の情報断片を繋ぎ合わせると、これらのプロジェクトは以下の図表のような関係性で語られていました。
この図表を見ると、Boatチェーンがハブとなり、OpenEXとミームコインのCOME/PumpkinCatを繋ぐ役割を担うかのように見えます。しかし、実際にはBoatチェーンがローンチに至らなかったことで、この「提携網」は絵に描いた餅となってしまいました。右のスクリーンショットはOpenEX(Testnet名はLONGです)の専用Walletとして開発されていたOEX Appのチェーン切り替えタブです。LONG TestnetとCORE Mainnetの他に、グレーアウトしたままのOEX MainnetとBOAT Mainnetが表示されています。つまり、BOATチェーンや$COMEのDevはOpenEXのDevと非常に近いと言っていいでしょう。
考えられる背景
- プロモーション戦略の一環: 実際の技術的な提携や連携は限定的で、単にそれぞれのプロジェクトが互いの名前を利用して注目度を高めようとした「プロモーション上の提携」であった可能性。ミームコインは話題性が命であり、既存のプロジェクトや技術と結びつけることで、正当性や将来性があるかのように見せかける手法は珍しくありません。
- 初期段階の構想止まり: Boatチェーン自体が、当初の計画段階で頓挫した結果、それに関連するミームコインプロジェクトも巻き込まれてしまった可能性。Web3プロジェクトは、その性質上、開発の難航や資金調達の問題などにより、計画通りに進まないことが多々あります。
- CoreDAOエコシステムへの「便乗」: CoreDAOの成長とOpenEXへの期待に乗り、そのエコシステムの一部であるかのように振る舞うことで、CoreDAOユーザーの関心を引きつけようとした可能性。CoreDAOは多くのユーザーを抱え、そのユーザーベースはミームコインにとって魅力的なターゲットとなり得ます。
プロジェクトの背後で実際にどのような人物が動いていたのか、公にされている情報は限られています。しかし、こうした複数のプロジェクトが同時期に似たような戦略で情報発信を行い、最終的に具体的な成果を出せずに停滞したという事実からは、何らかの意図を持った連携が存在した可能性を否定できません。それが「共謀」であったのか、「甘い見通し」であったのかは断定できませんが、結果として多くのCoreDAOユーザーに疑念と失望を残したことは確かです。
停滞と再動:そして昨日、PumpkinCatはSolanaを選んだ
期待は膨らむ一方で、これらのプロジェクトの具体的な進捗は停滞していきます。Boatチェーンはローンチに至らず、COMEやPumpkinCatも目立った動きを見せなくなりました。熱狂が去った後、情報更新は途絶え、これらミームコイン・コミュニティの活気も次第に失われていきました。CoreDAOユーザーの間には、これらのプロジェクトに対する不信感や疑念が募っていったことは想像に難くありません。
"GM! Are you ready for PumpkinCat relaunch on Solana? We are so excited to announce that we are back! Wen? Very soon..."
--- @PumpkinsCat, 2025年7月1日午前7時27分(JST)の投稿より
このSolanaへのリローンチは、いくつかの意味合いを推測させます。一つは、CoreDAOエコシステム、特にOpenEXやBoatチェーンの開発が想定よりも遅れている、あるいは方向性が変化したことで、PumpkinCatが新たな活路を見出した可能性です。ミームコインは、流動性とコミュニティの活発さが生命線であり、「Degen(Degenerate:投機性の高い投資を好む仮想通貨トレーダー)」たちが集まるSolanaで再出発を図ることは、彼らにとって最も合理的な選択だったのかもしれません。
We Will relaunch on solana network 😽
— Pumpkin Cat (@PumpkinsCat) June 30, 2025
もう一つは、そもそもこれらのプロジェクト間の連携が、実体を伴わない「絵空事」であった可能性です。市場の熱狂に乗じて、それぞれのプロジェクトが互いの名を借りながら、期待感を煽っていたに過ぎなかったとすれば、今回のSolanaへの回帰は、その実態が露呈したとも言えます。Xのフォロワー数やエンゲージメント率が低迷していた状況から一転、活発なチェーンへ移ることで「デッドキャットバウンス(Dead Cat Bounce:一時的な価格回復)」ならぬ「デッドプロジェクトリバイバル」を狙っているのかもしれません。
深層の推測:この動きの背後にあるものとCoreDAOユーザーへの示唆
一連の動きを俯瞰すると、Web3プロジェクト、特にミームコインが持つ「脆さ」と「不確かさ」が浮き彫りになります。言葉巧みに語られるビジョンや提携の噂が、必ずしも実体を伴わないままプロジェクトを先行させることがあります。そして、市場のセンチメントや開発の遅延によって、その期待は容易に崩れ去ります。
誰がこれらのプロジェクトの背後にいたのか、その全貌を明らかにすることは困難です。しかし、複数のプロジェクトが同じような時期に相互に関連性を示唆し、最終的に具体的な成果を出せずに停滞したという事実からは、何らかの意図を持った連携が存在した可能性を否定できません。それが「共謀」であったのか、「甘い見通し」であったのかは断定できませんが、結果として多くのCoreDAOユーザーに疑念と失望を残したことは確かです。Core ecosystemの根幹に置かれようとしていたOpenEXもこういった潮流の中でいつしか輝きを失っていきました。CoreDAOは2024年初頭からBTCfiに注力し、OpenEXが提唱した「資産性の高いトークンはL1のCoreで、日常のトランザクションはサイドチェーンのOEXで」という構想の前半部分を急速に整備していきます。ローンチが遅れたOEXはBTC L2を掲げ直して再起を図りますが趨勢は変わらなかったように見えます。私はOpenEXをこのCore ecosystemの中枢と捉えていたので、そのReferral Programもかなり真剣に取り組んでしまい、半年ほどで2,400 users(下のスクショは2024年10月のものなので最終的には3,000を超えていたと思われます。)を超える成果を出してしまいましたが、それも今は意味を持たない数字になりつつあります。 >>OEX Appのリファラルプログラム記事【OpenEXのOEXAppが搭載するReferral ProgramはSatoshiAPPを超えるか】
今回のPumpkinCatのSolanaリローンチは、かつてCoreDAOエコシステムで一縷の光を放ったミームコインプロジェクトの「夢」が、現実の厳しさに直面した結果とも言えるでしょう。CoreDAOユーザーとしては、OpenEXの今後の動向はもちろんのこと、このような外部プロジェクトとの連携においては、常に冷静な視点と慎重な判断が求められます。DeFiの荒波を乗り越えるためには、コミュニティの熱狂だけに流されることなく、プロジェクトの実体、技術的な進捗、そして開発チームの透明性を厳しく見極める知恵が必要不可欠です。
CoreDAOエコシステムは今後も進化を続けるでしょう。しかし、その道のりは決して平坦ではありません。「FUD(Fear, Uncertainty, Doubt:恐怖、不確実性、疑念)」に惑わされず、「DYOR(Do Your Own Research: 自分で調査する)」を徹底する。これが、Web3の世界で生き残るための「鉄則」であることを、今回の事例は改めて教えてくれています。
教訓めいた話になりますが、私のOpenEXプロジェクト用のWalletアドレスには、まだそれらのミームコインが残っています。
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