ConfluxとCoreDAO:なぜ似て非なるチェーンが同時期に開発されたのか?
【Blockchainと仮想通貨の深層に迫る】


目次


1. 導入:仮想通貨市場のスケーラビリティ問題と二つの新星

_939b49fa-52b1-436b-b4d0-033ec45fb2a0 Blockchainの深淵な世界へようこそ!あなたがもし、最近話題のDeFi(分散型金融)やNFT(非代替性トークン)、そしてWeb3(次世代のインターネット)の世界に興味を持ったばかりなら、きっとこんな疑問を感じているかもしれません。「なんで仮想通貨の取引って、たまにすごく高くなるの?」「もっと速く、安く取引できるブロックチェーンはないの?」

実は、これは仮想通貨が抱える大きな課題の一つ、「スケーラビリティ問題」が関係しています。ビットコインやイーサリアムといった、これまでの主要なブロックチェーンは、たくさんの人が同時に利用すると、処理が遅くなったり、手数料(ガス代)が高騰したりする傾向がありました。まるで、ハイシーズンの空港での搭乗手続きや極めて限られた席数しか無い航空チケットのようなものです。

そんな中、2020年前後に、この問題を解決しようと、画期的な技術を搭載した二つの新しいレイヤー1ブロックチェーンが登場しました。それがConflux(コンフラックス)CoreDAO(コアダオ)です。どちらもイーサリアムと同じようにdApps(分散型アプリケーション)を動かせる「EVM互換」で、独自の「ハイブリッドコンセンサス」という技術を採用しています。一見すると似ているようにも見えますが、その設計思想や歩んできた道は大きく異なります。

今回は、なぜこれほど独創的なアプローチのチェーンが同時期に生まれ、一方は「中国の地政学的特殊性」という制約の中で花開き、もう一方は「匿名性、分散化、公共性」という理念を掲げグローバルに展開しているのか、その深層に迫ります。この二つの物語から、ブロックチェーン技術の多様な進化の方向性を一緒に探ってみましょう!


2. Confluxチェーンの解剖:中国発の技術革新が織りなす未来

Confluxは、中国発のブロックチェーンプロジェクトとして、非常にユニークな立ち位置を確立しています。その背景には、中国特有の事情と、Confluxが持つ革新的な技術があります。

2.1. 中国で唯一の規制準拠パブリックチェーン

Confluxは、中国政府から「唯一公認されたパブリックブロックチェーン」という、世界的に見ても稀有な存在です。ご存知の通り、中国ではインターネットに対する厳しい規制「グレートファイアウォール」が存在し、海外の多くのサービスや情報が制限されています。仮想通貨に対しても例外ではなく、その規制は非常に厳しいものです。

しかし、Confluxは逆境をチャンスに変えました。中国政府は「ブロックチェーン国家戦略」を掲げ、ブロックチェーン技術を国の重要なインフラとして発展させようとしています。この国家戦略の中で、Confluxは上海市政府との提携や、中国の巨大通信会社である中国電信(China Telecom)との共同SIMカード開発といった具体的な実績を積み重ねています。まるで、政府公認の「デジタル経済特区」のインフラを担うようなものです。

なぜ中国で「公認」されることが重要なのでしょうか?それは、この厳しい規制環境下で、当局の承認なしにパブリックチェーンが自由に活動することはほぼ不可能だからです。Confluxは、この「後ろ盾」を得ることで、中国国内での唯一無二の存在となり、他のグローバルなブロックチェーンプロジェクトが容易には参入できない、広大な中国市場を独占的に開拓できるという、圧倒的な強みを得たのです。しかし、この強みは同時に、中国国内の政策や情勢に大きく左右されるという制約も伴います。

2.2. 驚異の処理性能を支える「Tree-Graph(ツリーグラフ)」

Confluxの基盤技術である「Tree-Graph(ツリーグラフ)」は、従来のブロックチェーンが持つ直列的な処理の限界を打ち破る革新的なアプローチです。一般的なブロックチェーンが、ブロックを「一本の鎖」のように連結していくのに対し、Tree-Graphはまるで「木(ツリー)」のように複数の「枝(ブランチ)」が同時に成長し、ブロックやトランザクションを並列で処理できるイメージです。これにより、ネットワーク全体の処理能力を飛躍的に向上させています。

コンセンサスアルゴリズムには、PoW(Proof of Work)PoS(Proof of Stake)を組み合わせたハイブリッドコンセンサス「GHAST」を採用。PoWで分散性と強固なセキュリティを確保しつつ、PoSで高速性と効率性を追求することで、ブロックチェーンの「スケーラビリティ」「セキュリティ」「分散性」という三大課題(トリレンマ)の解決を目指しています。

具体的な数字で見るConfluxの性能は驚異的です。

  • TPS (Transactions Per Second): ピーク時で約3,000~6,000 TPSを達成。これはイーサリアムの約13~30 TPSやビットコインの約7 TPSと比較して圧倒的な差があり、まさに「爆速」と呼ぶにふさわしい処理速度です。
  • ブロックタイム: 約0.5秒という超高速。
  • ガス代: 非常に低廉であり、トランザクションのコストがユーザーの負担になりにくい設計になっています。例えば、わずか数円から数十円程度で取引が完結することも珍しくありません。

2.3. 中国市場に特化したConfluxの戦略:独自開発L1の需要

前述の「グレートファイアウォール」は、海外のWebサービスやブロックチェーンへのアクセスを制限するだけでなく、中国国内独自のWeb3エコシステムの構築を強く促します。このような環境下で、Confluxは「中国版Web3の基盤」としての役割を担い、独自のレイヤー1(L1)ブロックチェーンに対する大きな需要を生み出しています。

中国版Instagramと呼ばれる「小紅書(RED)」とのNFTプロジェクトや、中国最大の検索エンジンBaidu(百度)との提携など、Confluxは中国国内の大手企業やプラットフォームとの連携を積極的に進めています。これは、他のグローバルなブロックチェーンプロジェクトが容易には参入できない、中国独自のWeb3市場における圧倒的な優位性を築いていると言えるでしょう。

また、ShuttleFlowなどのクロスチェーン機能は、Confluxが中国国内だけでなく、将来的にはグローバルなエコシステムとの接続も見据えていることを示唆していますが、その主軸はあくまで中国ドメインにおけるWeb3の未来にあると言えます。まさに、「内需拡大」と「国家プロジェクト」が融合したブロックチェーンの形なのです。


3. CoreDAOの深層:Bitcoinの力をDeFiに解き放つグローバルムーブメント

Confluxが中国に深く根を下ろす一方で、CoreDAOは「匿名性」「分散化」「公共性」を旗印に、グローバルな舞台で躍動しています。特に、ビットコインの持つ強大な力をDeFiに解き放つという野心的な目標を掲げています。

3.1. 「Satoshi Plus(サトシプラス)」コンセンサス:匿名性が生んだ革新

CoreDAOの根幹をなす「Satoshi Plus(サトシプラス)」コンセンサスは、ビットコインの揺るぎないセキュリティと、EVM互換ブロックチェーンの柔軟性を融合させるという、まさに「ハイブリッド」の極みです。この革新的なコンセンサスは、開発チームの「匿名性」によって生まれ、特定の管理者に依存しない「公共性」を追求するCoreDAOの思想を色濃く反映しています。

その中心にあるのが、DPoW (Delegated Proof of Work)DPoS (Delegated Proof of Stake) の組み合わせです。

  • DPoW: CoreDAOは、ビットコインのマイニングプールに「投票」することで、そのハッシュパワーをCore Chainのセキュリティ強化に間接的に活用します。これは、ビットコインの計算力を借りつつ、CoreDAO独自のブロック生成を可能にする画期的な仕組みであり、究極的な非中央集権性を追求するCoreDAOの思想を反映しています。
  • DPoS: ステーキングを通じて、COREトークン保有者がバリデーター(ネットワークの維持・運営者)を選出し、分散型ガバナンスに参加します。ビットコインのマイナーもCOREトークンをステーキングすることで、報酬を得ながらネットワークの運営に貢献できるという、インセンティブ設計がされています。

さらに、特筆すべきは「非カストディアルBitcoinステーキング」という機能です。これは、ユーザーが自分のビットコインをウォレットから移動させることなく、Core Chainのバリデーターをサポートし、ネットワークのセキュリティに貢献できるというもの。これにより、ビットコインコミュニティが重視する「匿名性」と「自己主権性」を損なうことなく、DeFiエコシステムに参加できる道を開いているのです。CoreDAOが掲げる「公共性」とは、特定の管理者を持たず、誰もが平等に利用・貢献できるインフラを目指すという理念を指しています。

3.2. 進化元を超える処理性能を誇るCoreDAO

CoreDAOは、EVM互換のレイヤー1ブロックチェーンとして、その処理性能においても既存の主要なブロックチェーンと比較して優位性を持っています。特に、多くのDeFiプロジェクトが稼働しているBNB Smart Chain (BSC)と比較しても、より高い効率性を誇ります。

  • TPS: CoreDAOは具体的なピークTPSを公表していないものの、Ethereumと比較してはるかに高速で、ガス代も低廉な取引環境を実現しています。参考までに、BNB Smart Chain (BSC) のTPSが約100~200程度であるのに対し、CoreDAOはSatoshi Plusコンセンサスの最適化により、より多くのトランザクションを効率的に処理できる設計になっているとされています。これにより、DeFi利用時の混雑や高額な手数料といったストレスを大幅に軽減することが可能になります。
  • ブロックタイム: 約3秒。これは、高速性と分散性のバランスを考慮した上で、DeFiアプリケーションのスムーズな動作を支えるのに十分な速度と言えるでしょう。
  • ガス代: イーサリアムに比べてはるかに低廉であり、DeFiのヘビーユーザーにとっても、気軽に多くのトランザクションを実行できる環境を提供しています。数セント(数十円程度)で取引が完了することも多く、コストを気にせずDeFiを楽しめます。

3.3. グローバルDeFi市場を狙うCoreDAOの挑戦:分散化と公共性へのこだわり

CoreDAOの最大の目標は、時価総額で圧倒的な存在感を誇りながらも、これまでDeFiエコシステムで十分に活用されてこなかったビットコインの巨額の流動性を、分散型金融(DeFi)エコシステム「BTCFi(Bitcoin DeFi)」に統合することにあります。

coreBTCは、ビットコインをCore Chain上で1対1でペッグしたラップトークンであり、これによりビットコインホルダーは、その資産をDeFiプロトコルで担保として利用したり、流動性を提供したりすることが可能になります。これは、ビットコインに新たな金融的なユースケースを与える画期的な試みです。

Core Chainエコシステムでは、Pell(マルチチェーン再ステーキングプロトコル)Colend(レンディングプロトコル)といったDeFiプロジェクトが急速に成長しており、TVL(Total Value Locked:預け入れ総額)も大幅に増加しています。特にPellは、ビットコインエコシステムにおける流動性のハブとして注目を集めています。

前述の通り、CoreDAOの開発チームは匿名性を貫いており、これは中央集権的な統治を避けるという強いメッセージが込められています。ガバナンスはCOREトークンホルダーによるDAO(分散型自律組織)によって行われ、これによりネットワークの運営が「公共財」として、特定の企業や個人に依存しない形で維持されることを目指しています。


4. 似て非なる道:なぜConfluxとCoreDAOは異なる市場を選んだのか?

ConfluxとCoreDAOは、まるで双子の兄弟のように似た技術的アプローチを持ちながらも、なぜこれほど異なる道を歩むことになったのでしょうか?そこには、それぞれの置かれた環境と、プロジェクトが掲げる理念が深く関係しています。

4.1. 共通の課題への独創的アプローチ:ハイブリッドコンセンサスという思想的共通点

ConfluxとCoreDAOは、共にブロックチェーンが常に直面する「スケーラビリティ」「セキュリティ」「分散性」という「トリレンマ」の解決に挑むという点で共通の目的を持っています。従来のPoW(ビットコイン)やPoS(イーサリアム2.0)だけでは限界があることを認識し、両者とも、それぞれの強みを融合させたハイブリッドコンセンサスを独自に開発しました。これは、単に既存の技術を模倣するのではなく、ブロックチェーンの未来を自らの手で切り開こうとする強い意志の表れであり、同時期に同じような独創的アプローチが生まれたこと自体が、当時の仮想通貨業界の切迫感と技術革新への渇望を物語っています。

4.2. 「中国の地政学的特殊性」と「匿名性・分散化・公共性」の対比

ここに、両チェーンの明確な分岐点と、その思想的な対比が浮き彫りになります。

  • Conflux: 中国政府という強力な「後ろ盾」を得て、国内の規制準拠と独自エコシステムの構築に注力しています。これは、厳格な規制が存在し、政府の許可なしにはほとんどのサービスが機能しない中国において、プロジェクトが生き残り、発展するための「生存戦略」であり、同時に中国のWeb3インフラとしての地位を確立するための道筋でもあります。Confluxは、中国市場に特化することで、その巨大なユーザーベースと潤沢な資金源を確保しました。しかし、その強みは同時に、中国国内の政策や情勢(例えば、仮想通貨に対する規制のさらなる強化など)に大きく左右されるという「制約」も伴います。言わば、国家の発展に貢献する「公共事業」としてのブロックチェーンを目指しているのです。
  • CoreDAO: 開発チームの匿名性を貫き、DAOによる分散型ガバナンスを重視することで、特定の政府や大企業に依存しない「公共財」としてのブロックチェーンを目指しています。これは、ビットコインコミュニティが長年培ってきた「検閲耐性」「究極の分散化」「自己主権性」といった理念を色濃く反映したものです。CoreDAOは、規制の厳しい地域に縛られることなく、グローバルなDeFi市場とビットコインコミュニティの力を結集することを目指しています。誰にも管理されない、真に分散化されたインフラを提供することで、世界中のユーザーが自由に参加できる「公共の場」を創り出そうとしているのです。

この対比は、ブロックチェーン技術が、異なる地政学的・文化的背景の中で、いかに多様な形で発展していくかを示す好例です。一方は「国」との協調を選び、もう一方は「無国籍」な分散化を追求していると言えるでしょう。

4.3. 競争と共存:今後の展望

Confluxは中国市場でのユニークな地位を活かし、規制準拠のWeb3インフラとしてその存在感をさらに高めていくことが予想されます。特に、中国のデジタル人民元との連携や、NFT、ゲームといった分野での発展が期待されます。

一方、CoreDAOはビットコインの流動性をDeFiに解放することで、グローバルなBTCFi市場のリーダーシップを確立しようとしています。ビットコインの半減期や、ビットコインL2ソリューションの台頭といったトレンドの中で、CoreDAOがどのような役割を果たすか、その動向は注目に値します。

現時点では直接的な提携は確認されていないものの、両チェーンがそれぞれ異なるエコシステム(Confluxは中国、CoreDAOはグローバルビットコインコミュニティ)で強固な基盤を築くことで、将来的にはクロスチェーン技術(ShuttleFlowやcoreBTC/aBTCブリッジなど)を介した連携の可能性もゼロではありません。仮想通貨の「未来のOS」の座を巡る競争は激化するが、それぞれの道を究めることで、ブロックチェーン全体の進化に貢献していくことになるでしょう。


5. まとめ:二つのブロックチェーンが描く未来

いかがでしたでしょうか?ConfluxとCoreDAOは、同時期に独創的な技術的アプローチで誕生し、仮想通貨が抱えるスケーラビリティ問題に挑んだ点では共通しています。どちらもPoWとPoSを組み合わせたハイブリッドコンセンサスを採用し、高速・低コストな取引を実現しました。

しかし、その後の歩みは大きく異なりました。Confluxは中国の特殊な環境下で「規制準拠」「国家インフラ」としての道を、CoreDAOは「匿名性」「分散化」「公共性」を追求し「Bitcoin DeFiの担い手」としての道を歩んでいます。

この対比は、ブロックチェーン技術が多様な地政学的・文化的背景の中でいかに進化し、異なるニーズに応えていくかを示す好例です。Confluxの中国における独自の地位と、CoreDAOのビットコインエコシステムを巻き込んだグローバルな挑戦、この二つの独創的なチェーンの動向から目が離せません。
尚、2022年前半にCoreDAOのホワイトペーパーや各種アーティクルを徹底的に読んだ私には、CoreDAOの起源には中国の薫りが漂うように思えるのです。
>>CoreDAOの起源に関する過去記事【オカルトで読むCoreプロジェクト】
>>CoreDAOの謎解き1【CoreDAOの謎に迫る(1):SatoshiAPPを使った初期戦略分析】
>>CoreDAOの謎解き2【CoreDAOの謎に迫る(2):匿名の開発主体とその背後にある可能性】

あなたのDeFiジャーニーに、どちらのチェーンが新たな刺激をもたらすのか、ぜひそれぞれの強みと理念に注目して、これからの発展を応援してみてはいかがでしょうか?ブロックチェーンの世界は、まさに今、「アツい」動きが止まりません!