Blockchainの「Legendたち」:第3回 現代版三国志の雄、CZ

【Legends】Changpeng Zhao(チャンポン・ジャオ)の旅:現代版三国志の雄、CZ

cz仮想通貨の世界でその名を轟かせ、業界の潮流を幾度となく変えてきた「レジェンド」たち。その中でも、ひときわ異彩を放ち、波乱万丈のキャリアを歩んできたのが、Binance(バイナンス)の創業者であるChangpeng Zhao(チャンポン・ジャオ)、通称CZです。彼の物語は、まさに現代の「三国志」と呼ぶにふさわしい、壮大なドラマが繰り広げられてきました。祖国である中国に残ったふたりの巨星star_okx、justin_sun_tronとの関わり合いは仮想通貨の三国志と称されるに足るものでしょう。


逆境から生まれた伝説:CZの半生

1977年9月10日、中国・江蘇省で学術的な家庭に生まれたCZの幼少期は、決して裕福ではありませんでした。12歳でカナダ・バンクーバーに移住後、家計を支えるためマクドナルドやガソリンスタンドで働き、苦学を経験します。この逆境が、彼のハングリー精神と勤勉さを育んだと言えるでしょう。

マギル大学でコンピュータサイエンスを専攻したCZは、金融とトレーディングの世界に魅了されます。東京証券取引所での取引マッチングソフトウェア開発、そしてブルームバーグでの先物取引ソフトウェア開発を経て、2005年には上海で自身の高頻度取引システム開発会社Fusion Systemsを設立。テクノロジーと金融の最前線でキャリアを積んでいきました。

彼の人生の転機となったのは2013年。ビットコインとの出会いです。仮想通貨の可能性に強く惹かれ、Blockchain.infoの開発責任者を務めます。さらに翌2014年には、上海の自宅を売却し、全財産をビットコインに投資するという大胆な行動に出ます。一時的な価格下落で損失を被るも、その信念は揺らぎませんでした。


Binanceの誕生と世界制覇

仮想通貨取引所の運営を学ぶため、2014年6月からOKCoin(現OKX)のCTOに就任するも、創業者であるStar Xuとの価値観の相違からわずか数か月で退職。その後、収集品向け取引システムを提供するBijie Techを設立するなど、水面下で準備を進めていました。

そして2017年7月1日、CZは運命のプロジェクトBinanceを設立します。わずか15百万ドルのICO(Initial Coin Offering)で独自の仮想通貨BNBを発行し、その11日後には取引を開始。この時期から、彼のTwitterアカウント@cz_binanceが仮想通貨コミュニティで注目を集め始めます。中国の仮想通貨規制強化を受け、迅速に日本、マルタへと拠点を移し、「本社を持たない」という画期的な運営体制を確立。その結果、設立からわずか180日でBinanceは世界最大の取引所に上り詰め、2018年にはForbesの仮想通貨富豪リストで3位にランクインするまでになりました。

Binanceの成功は、単なる取引所の成長にとどまりません。2019年にはBinance Smart Chain(現BNB Chain)を立ち上げ、DeFi(分散型金融)エコシステムの中心となり、2019年には米国市場に対応したBinance.USを設立するなど、仮想通貨業界全体を牽引する存在となっていきます。ハッキングによる7,000BTC盗難という危機も、ユーザーへの全額補償とセキュリティ強化で乗り切り、そのリーダーシップを印象付けました。


現代版三国志:宿命のライバルたちとの攻防

CZのキャリアは、多くのライバルたちとの激しい競争と対立の歴史でもあります。特に、中国系三大取引所として名を馳せるBinance、OKX、HTX(旧Huobi)の創業者やオーナーたちは、さながら「現代版三国志」の英雄たちと言えるでしょう。

OKXのStar Xuとの因縁

CZとOKXの創業者Star Xu(徐明星)の因縁は、CZがOKCoinのCTOを務めていた2014〜2015年に遡ります。CZは当時、OKCoinを中国トップの取引所に押し上げるなど貢献しましたが、Star Xuの不透明な経営価値観の違いからわずか数か月で退職を決意。

決定的な対立となったのは2015年の投資家Roger Verとの契約紛争です。CZが署名した契約書をStar Xu側が「偽造」と主張し、CZはこれを否定。Star Xuの不透明な運営姿勢を公然と批判しました。この出来事により、両者の信頼関係は完全に崩壊します。

その後も、BinanceとOKXは仮想通貨取引所として激しく競合します。2020年には、OKXのCEOであるJay Hao(Star Xuの部下)が、BinanceのDeFiプロジェクトを「無責任」と批判し、Binance Smart Chainの中央集権性を指摘するなど、両社の競争は表面化しました。さらに2022年のFTXの流動性危機時には、Star Xuが「業界全体に損失をもたらす」としてCZにFTTトークン売却の再考を促すなど、Star Xuが業界の安定を重視する立場を示しつつも、CZの行動を間接的に批判する場面も見られました。

HTXのJustin Sunとの関係

もう一人の主要なプレイヤーが、HTX(旧Huobi)のCEOであるJustin Sun(ジャスティン・サン)です。彼もまた、CZと同じく中国出身で、Tronの創業者としても知られています。Justin SunとCZの間には、直接的な「揉め事」は多く報道されていませんが、同じ中国系取引所のトップとして、水面下では常に競争関係にありました。

特に、HuobiがFTXの崩壊後に市場での存在感を高めようとした際や、DeFi分野での競争において、BinanceとHuobi(後のHTX)はそれぞれの戦略を展開し、ユーザー獲得競争を繰り広げました。Justin Sunは孫正義氏との繋がりをアピールしたり、積極的にミームコインに関与したりと、CZとは異なるアプローチで市場に影響を与えてきました。 >>Justin Sun関連記事【【Legends】FUDの覇者?ジャスティン・サンが語る「真実」とは【WLFI・TRX】】

このように、CZ、Star Xu、Justin Sunの3名は、それぞれの取引所を率いて仮想通貨市場の覇権を争い、時に協力し、時に激しく対立しながら、現代のブロックチェーン業界を形作ってきました。彼らの関係性は、まさに歴史上の「三国志」を彷彿とさせます。 >>仮想通貨の三国志関連記事【三国志現代版】


現代版三国志の主要人物比較

特徴 / 人物 CZ (Binance) Star Xu (OKX) Justin Sun (HTX / Tron)
出身・背景 中国出身・カナダ育ち、コンピュータサイエンス 中国出身、実業家 中国出身、Peking University卒、仮想通貨インフルエンサー
リーダーシップスタイル 覇道の雄(曹操): 迅速な意思決定、大胆な事業展開、世界的視野、透明性(建前)、カリスマ性。市場トレンドを主導し、迅速に実行に移す。 堅実な支配者(孫権): 安定志向、保守的、堅実な経営。時に不透明性も指摘されるが、自身の基盤を固めることに長ける。 蜀漢の才気(劉備): 新規事業への積極性、広報戦略に長ける。時に物議を醸す言動も目立つが、影響力は大きい。
取引所戦略 グローバル展開: 世界規模でのユーザー獲得、多様なプロダクト提供、エコシステムの構築(BNB Chain)。規制への適応も迅速。 中国市場重視から国際化: かつて中国市場で強固な地位を築き、現在は国際展開。技術開発力も高い。 買収と連携: Huobi買収やTRONエコシステムの拡大を通じて影響力を拡大。ミームコインやDeFiへの関与も積極的。
主な対立・関係 Star Xuとは過去の不透明な経営を巡る確執。Justin Sunとは競争関係だが、直接的な衝突は少ない。 CZとは経営方針と透明性を巡る確執。Binanceとはライバル関係。 CZやStar Xuとは直接的な対立より、市場での競争が主。自身のプロジェクトTronのエコシステム拡大を重視。
代表的な出来事 Binanceの設立と世界最大化、規制当局との衝突、CEO辞任、服役。 OKCoinの成長、Roger Verとの契約紛争、不透明性批判。 Tronの設立、Huobiの買収、積極的に注目を集める発言。
ペルソナ 「カリスマ的革命家」: 規制を乗り越え、市場を牽引する。 「地に足のついた実業家」: 安定と自社の利益を重視する。 「野心的な戦略家」: 新しいトレンドに乗り、自身の影響力拡大を図る。

転換点と新たな章

CZのキャリアは順風満帆ではありませんでした。2021年にはシンガポールでの取引所運営申請を撤回するなど、各国の規制当局との関係は常に課題でした。そして2023年、マネーロンダリング関連の罪を認め、BinanceのCEOを辞任。5000万ドルの罰金と43億ドルの企業罰金を支払い、2024年4月には4か月の懲役刑を言い渡され、同年6月1日から服役しました。この出来事は、CZのキャリアにおける最大の転換点であり、多くの人々に衝撃を与えました。

しかし、彼の影響力が途絶えることはありませんでした。2024年9月27日に刑期を終え釈放された後、CZはすぐに@cz_binanceでの活動を再開。偽アカウントへの警告や市場動向への言及、そして2025年1月21日には自身の資産構成(98.6%がBNB、1.3%がビットコイン)を公開し、再び市場に大きな影響を与えました。

さらに、パキスタンやキルギス共和国の大統領顧問に任命されるなど、その知見と影響力は国家レベルでも求められるようになりました。2022年11月には、バリ島で開催されたG20の関連イベントであるB20サミットに参加し、FTXの破綻直後という状況下で仮想通貨規制の必要性を強く訴えました。この会合で他の中国系・シンガポール系CEX経営者と特定の「Binance Summit」と称する会談が行われたという直接的な情報は見当たりませんが、B20サミットのような大規模なビジネスイベントでは業界関係者間の非公式な会合が行われることは一般的であり、意見交換があった可能性は考えられます。

2025年7月5日には、2011年に0.1ドルで仮想通貨を動かしていた「クジラ」を目撃し、自身の参入の遅さを反省したと発言。この投稿はXで大きな話題となり、同時期にSatoshi Nakamoto関連と推測される80,000BTCのウォレット移動があったことから、コミュニティの議論を活性化させました。


CZが残すもの

CZの物語は、単なる富と成功の物語ではありません。貧困からの脱却、技術への情熱、そしてビットコインへの揺るぎない信念が、彼を「仮想通貨の伝説」へと押し上げました。@cz_binanceを通じて発信される彼の言葉は、市場動向や投資家心理に多大な影響を与え、ミームコインのトレンドや慈善活動(ブテリンへの寄付など)暗号資産の相続問題でもその存在感を示しています。 >>暗号資産に関するCZの提言関連記事【【重要】[PR]もしもの時、あなたのデジタル資産は誰の手に?暗号資産の相続問題とCZの提言】

規制と法的な問題に直面しながらも、CZは常に仮想通貨の可能性を信じ、その普及に尽力してきました。彼のキャリアは、ブロックチェーン業界の黎明期から現在に至るまでの変遷を凝縮したものであり、まさに「伝説」と呼ぶにふさわしいものです。釈放後も影響力を保ち続ける彼の今後の動向から、引き続き目が離せません。



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